人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

声のした方をヴァイオレットが見れば、そこには初老と見られる男性が立っていた。その隣にはピンクのドレスを着た婦人が優しげな笑みを浮かべている。

「ヨーク伯爵、ペチュニア夫人、お久しぶりです。ヴァイオレット、こちらはベネディクト・ヨーク伯爵と奥方とペチュニア様だよ」

イヴァンは顔見知りだったようで、落ち着いた様子で二人を紹介する。ヴァイオレットはカーテシーを二人にし、名前を口にした。

「お初にお目にかかります。イヴァン様の妻のヴァイオレットと申します。以後お見知り置きください」

ヴァイオレットが顔を上げると、二人は優しげな笑みを浮かべており安堵する。ヨーク伯爵はイヴァンに話しかけた。

「ご結婚をされたと噂では聞いていましたが、こんなにもお美しい方を娶られるとは……。ブルースター様と隅に置けませんな」

「本当、お綺麗ですわ。髪の毛は艶やかで瞳はアメジストのようで……」

ペチュニア夫人も口を開き、ヴァイオレットはお礼の言葉を述べる。しばらく二人と話し、イヴァンが「ヴァイオレット、そろそろ他の方にも挨拶をしないといけないね」と言い、ヨーク夫妻から離れた。

「どうだった？夜会での貴族との会話は？」

「まだ友好的な方でしたので、問題なく話せました。ヨークご夫妻が仰っていた言葉は、全て社交辞令だとは頭の隅でわかってはいますが……」

「そうかな？こんな事情を抱えた僕はまだしも、ヴァイオレットに対してはみんな心の底から君を褒めていると思うよ」

「そうでしょうか？」