人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
話をしながらホールの中を歩いていると、「イヴァン?ヴァイオレット様?」と声をかけられる。振り返ると、そこにはサクラとオリバーが立っていた。二人の格好にヴァイオレットは目を見開く。

オリバーは軍服を着ているものの、その軍服には儀礼用の装飾が施されており、いつも以上に華やかに見える。そして、サクラは軍服ではなく美しいドレスを身に纏っていた。

「オリバー様、サクラ様、とても素敵です!サクラ様はドレスを新調されたのですか?」

ヴァイオレットが訊ねると、サクラは「いいえ」と首を横に振る。では、誰かからの贈り物ということになる。イヴァンが驚いたように口を開いた。

「もしかしてそのドレス、フェリシアーノが?」

今宵の主役の名前が紡がれる。フェリシアーノはまだこのホールには姿を見せていない。四人の周りでは、未婚のご令嬢が彼の登場を今か今かと心待ちにしている。

「私は軍服で警護を兼ねて来る予定でしたが、フェリシアーノが「これを着てくれなきゃ夜会に出席しない!」と駄々を捏ねたので……。こんなドレス、私には不釣り合いなのですが」

「サクラ、本当にすまない。俺が知らないところであいつはまたそんな駄々を捏ねていたのか……」

謝るオリバーの横で、恥ずかしそうにサクラは自身の着ているドレスを見つめている。フェリシアーノから贈られたというドレスは、白いAラインのもので胸元にはたくさんのピンクの花が刺繍されていた。サクラの黒い髪は緩く巻かれて美しい花の髪飾りが付けられており、よく似合っている。フェリシアーノのセンスがいいのだろう。
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