人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

王宮の可愛らしいリボンのついたメイド服を身に纏い、チョコレートブラウンのショートカットに猫のような目を持った彼女は、ワインやシャンパンの入ったグラスをお盆に乗せ、談笑する貴族たちに話しかけていく。

「お飲み物のお代わりはいかがですか？」

その声と顔をヴァイオレットが間違えるはずがなかった。もう二度と会えないと心のどこかでは思っていたため、ヴァイオレットの目の前がぼやけてしまう。彼女が何故ここにいるのかという疑問よりも、今は喜びの方が大きかった。

「ありがたい。ちょうど喉が渇いてしまっていたんだよ」

貴族たちは話を続けながら、使用人の持ったお盆の上に置かれたグラスを次々と取っていき、お盆の上からあっという間にグラスが消えてしまう。使用人は貴族たちに頭を下げ、ホールを出て行ってしまった。

（ここで声をかけないと、一生後悔する！）

ヴァイオレットは何故かそう思った。サクラとオリバーと楽しそうに話すイヴァンにヴァイオレットは声をかける。

「イヴァン様、申し訳ありません。少し風に当たってきます」

一緒に行こうか、とイヴァンに声をかけられたものの断り、ヴァイオレットはホールの外へとドレスを裾を持ち上げて早足で向かう。

「ミモザ！！」