人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
廊下に出た後、ヴァイオレットは小走りになりながら彼女の名前を呼ぶ。ヴァイオレットの胸は高鳴り、今にも感情が爆発してしまいそうだった。

「ミモザ！！」

ヴァイオレットはもう一度彼女の名前を口にする。すると、曲がり角からメイド服を着たミモザが不思議そうな顔を覗かせる。その瞳がヴァイオレットを捉えた時、ミモザの顔は驚き一色に包まれた。

「もしかして、ヴァイオレット？どうしてこんなところに？今日は未婚の貴族だけが集まる夜会だって聞いたんだけど」

ヴァイオレットに駆け寄ったミモザは不思議そうに訊ねる。ヴァイオレットはミモザを抱き締め、「フェリシアーノ様に招待されたの。まさか、こんなところで会えるなんて！」と喜びを伝える。溢れた感情が雫となってヴァイオレットの頰を伝った。

「ミモザ、ランカスター様の屋敷からアルストロメリアの王宮で働くことになったの？」

ヴァイオレットはミモザから離れ、気になっていたことを訊ねる。ミモザは首を横に振った。

「違うよ。今日、あたしはーーー」

ミモザが言いかけたその時である。ヴァイオレットとミモザの背後から甲高い怒声が響いた。

「ちょっと！！無能な非魔法家系のメイド！！仕事をサボって何をしてるのよ！！あんたがしっかり働かないと、フェリシアーノ様に私が素敵な人だと思われないでしょうが！！」

ヒステリックに叫ぶこの声を、ヴァイオレットは知っている。恐る恐る振り返れば、ダイヤモンドが散りばめられた派手な赤いドレスが目に入った。

「申し訳ありません、イザベル様……」

ミモザは謝り、ヴァイオレットに何も言わずに立ち去っていく。ミモザを怒鳴り付けたのは、かつてヴァイオレットが使用人として働いていたランカスター家の一人娘であるイザベル・ランカスターだった。
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