人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「遅くなってしまい、申し訳ありません。私にお話があるとアザミメイド長から伺ったのですが……」

ヴァイオレットがそう二人に声をかけると、イザベルが「やっと来た〜」と気怠そうに言う。ヴァイオレットとミモザと同じ歳であり、最近デビュタントを迎えたばかりの彼女は、「美しい」と大勢の魔法家系の貴族たちの間で話題になっていると使用人たちの噂でヴァイオレットも耳にしたことがある。

(仕事中は目にすることがほとんどないけど、やっぱり綺麗なお方……)

金糸のような美しい長い髪は丁寧に巻かれ、宝石の入った髪飾りが付けられており、大きな青の瞳はまるでサファイアが埋め込まれているかのように見える。傷一つない白い肌は雪原のように美しく、強く抱き締めたら折れてしまいそうなほど華奢な体をしており、同性であるヴァイオレットですら目を奪われてしまうほどの美貌の持ち主である。

「……カッシング、お前は隣国アルストロメリアにあるウィロウ地方を知っているか?」

「はい。実際にその地に行ったことはありませんが、文献で目にしたことはあります」
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