人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
怒りを露わにするイザベルに対し、ヴァイオレットは恐怖を覚えつつも淡々と答えていく。ヴァイオレットが口を閉ざすと、目の前で自分を睨み付けている彼女の口から舌打ちが飛び出した。

「何よ、ど田舎に嫁いだ非魔法家系の人間のくせに!あんたなんて私たちが命じなければ、ドレスなんて一生着ることはなかったのよ!?」

「それはわかっています。ですがイザベル様、ウィロウ地方のことをど田舎と言うのはやめてください。私のことはいくらでも罵倒していただいて構いません。ですが、ウィロウ地方にはイヴァン様のお屋敷があり、お屋敷で働く人、そしてウィロウ地方で暮らしている人々がいます。馬鹿にしないでください」

ヴァイオレットは屋敷に住んでいるイヴァンとアイリスとリオン、そして屋敷の近くに住んでいる人々の顔を思い浮かべ、言う。声は情けなく震えていたものの、ヴァイオレットの心の中には「ど田舎」と言ったイザベルに対し、怒りが燃えていた。

「……使用人から偽物の花嫁になってから、随分と偉そうになったのね。非魔法家系なんて、奴隷のように働くことしかできないのよ?あんたも、さっきのあのメイドも」

イザベルは額に青筋を浮かべ、腕を組む。それだけでも圧力を感じた。次に口を開けば自分には使用することのできない魔法で攻撃されるかもしれない。そんな恐怖はあったものの、ヴァイオレットは先ほどのミモザが見せた顔を思い出し、口を開く。

「……私は、私たち非魔法家系は、いつだって魔法家系の人たちの下で働くことしか許されませんでした。魔法家系の人が当たり前に過ごしている幸せな日々なんてものは、私たち非魔法家系にはなかった」
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