人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「当然でしょ？魔法が使えないんだから。だから馬車馬のように働いて、主人の出世や結婚のチャンスが舞い込んできた時には相手のお屋敷やお城で働いて家の印象を大きくさせる。主人の幸せが奴隷の幸せでしょ？」

イザベルは、「何を当然なことを」と冷たい目でヴァイオレットを睨む。イヴァンに嫁ぐ前のヴァイオレットのならば、イザベルの言葉に首を縦に振って嘘を吐いていただろう。しかし、今は違う。

「人をことを平気で「奴隷」と言い、こき使うような傲慢な人を、フェリシアーノ様は好きになることはありません！」

ヴァイオレットが大声でそう言うと、イザベルの顔が怒りで赤くなっていく。彼女は素早く杖を取り出し、それを躊躇うことなくヴァイオレットに向けた。

「奴隷の分際で、私に偉そうなことを言うんじゃないわよ！！ナドバ！！」

イザベルが呪文を唱えると、杖の先から何かが次々と飛び出してくる。それは細長い針だった。ヴァイオレットがそれを認識した時には、針はヴァイオレットの肌に穴を開けようとしていた。

（イヴァン様！！）

ヴァイオレットは強く目を閉じ、避けられない針を全身で受け止めようとしていた。しかし、針は何秒経ってもヴァイオレットの体に突き刺さることはない。刹那、ヴァイオレットの肩に誰かが触れ、引き寄せられる。