人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「ヴァイオレット、怪我はないかい？」

イヴァンの声だった。ヴァイオレットが目を開けると、自分の目の前で針が止まっている。そして顔を上げれば、真剣な表情をしたイヴァンがいた。イヴァンの左手はヴァイオレットを抱き寄せており、右手は真っ直ぐに伸ばされ、その手からは水色の光が溢れ出していた。この光がヴァイオレットとイヴァンを守っているのだ。

「グリンニャ！」

イヴァンが呪文を唱えると、針が次々と粉々になり、王宮の廊下に散らばっていく。自分の放った魔法がいとも簡単に破られてしまったことに、イザベルは腹を立て、ヒールの履いた足で悔しげに地面を叩き付けながら怒鳴り散らす。

「何すんのよ！！その女の顔に穴を開けてやるつもりだったのに！！私はあのランカスター家の一人娘なのよ！？下級貴族が調子に乗ってんじゃないわよ！！パパに言いつけてやるから！！」

「……僕の妻が怪我をするところだったんです。守るのは当然です」

感情的なイザベルとは反対に、イヴァンは淡々と言葉を発する。しかし、イヴァンの瞳には怒りがあった。

「は？妻？」

「イヴァン・ブルースターです。妻がお世話になったようで」