人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
互いの鼓動が近くで響く。ヴァイオレットは息を吐き、恐る恐るイヴァンの背中に手を回す。幼い頃、母親に抱き締められた時のことをヴァイオレットは思い出す。温もりに包まれて安心した懐かしさが込み上げた。しかし今、ヴァイオレットの胸は安心と同時に揺れ動いている。

(すごく……心が熱い……)

イヴァンの燕尾服を気が付けばヴァイオレットは握り締めていた。イヴァンはそれに気付き目を細めた後、ヴァイオレットの髪に優しく触れる。それだけでヴァイオレットの胸はまた高鳴った。



涙で落ちてしまったメイクをイヴァンに魔法で直してもらった後、ヴァイオレットはホールの中へと戻った。

「イヴァン、ヴァイオレット様、そろそろ始まるぞ」

ヴァイオレットとイヴァンに気付き、オリバーが声をかけてくる。見れば、先ほどまでは何もなかったはずのホールの中央に真紅の長いカーペットが敷かれ、その先には玉座が用意されている。

「あそこの椅子にフェリシアーノが座って、ご令嬢方が名前を呼ばれたら椅子の前まで行き、お辞儀をするようです。フェリシアーノが一体誰を選ぶのか、楽しみですね」
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