人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
サクラは、まるで弟の幸せを見守る姉のような顔をしていた。その顔を見てイヴァンが「フェリシアーノ、サクラは全く気付いてないよ」とここにいないフェリシアーノに何やら呟いている。その言葉の意味をヴァイオレットが訊ねようとした刹那、「紳士淑女の皆様、今宵はお集まりいただきありがとうございます!」と夜会の始まりを告げる大臣による挨拶が始まってしまった。

「フェリシアーノ・アルストロメリア第一王子のご登場です!」

大臣がそう言うと、ホールの扉が開き、フェリシアーノがマントを靡かせながら入って来る。彼が身に纏っている衣装は、ヴァイオレットが今まで見た中で、一番と言ってもいいほど華やかなものだった。

ヴァイオレットが周りを見れば、未婚の女性たちの目が獣のように鋭いものになっていくのがわかった。ここにいる未婚女性は全て敵。あわよくば自分が次期王妃の座に。彼女たちの視線がそう物語っている。

それは、先ほどまでヴァイオレットやミモザを罵倒していたイザベルも同じだった。周りにいる女性たちを睨み付け、フェリシアーノに熱のこもった目を向けている。

「アナ・ローダンセ嬢」

大臣が名前を呼ぶと、ミントグリーンのドレスに身を包んだ女性がカーペットの上を歩き、フェリシアーノの前でカーテシーを見せる。女性はとても緊張しているように見えた。
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