人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
共に過ごす時間が長ければ長いほど、相手の情報が知らず知らずのうちにわかってしまう。相手のちょっとした癖、声のトーン、表情、それら全てがメッセージとなって送られてくる。

(ミモザと話したい……!)

心の中にふつふつと湧いた感情に、ヴァイオレットは拳を握り締めて何とか堪える。そうしている間にも、ご令嬢の名前が次々と呼ばれていった。

「イザベル・ランカスター嬢」

イザベルの名前が呼ばれた。ヴァイオレットはハッと息を呑み、カーペットの上を堂々と歩いて行く彼女を見つめる。イザベルの後ろ姿からは、必ず自分が選ばれるという自信に満ち溢れていた。

イザベルはフェリシアーノを見つめ、丁寧なカーテシーを見せる。しかしフェリシアーノは玉座から動こうとしない。

自分が選ばれなかったことにイザベルの顔から表情が抜け落ち、彼女はその場で固まってしまう。しかし、そうしている間にも大臣が次のご令嬢の名前を読み上げたため、イザベルはチャールズに腕を引かれてカーペットの上から退場した。

(フェリシアーノ様がイザベル様を選ばなくてよかった……)

次にカーテシーを見せたご令嬢に対し変わらず笑みを浮かべているフェリシアーノを見て、ヴァイオレットはホッとしてしまう。それと同時に、自分はこんなにも性格が悪くなってしまったのかと戸惑いもした。
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