人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「イヴァン様、私は魔法家系の人間です。産んだ子どもは必ず魔法が使えますし、何より私はこんな容姿ですから大層連れ回し甲斐があるでしょう？その女にそんな豪華なドレスは不似合いですわ。その女は少し前まで薄汚いメイド服を着ていましたから、そっちの方が似合いますことよ。豪華なドレスは私のためにーーー」

「黙れ！！これ以上僕の妻を侮辱するな！！」

イザベルがまだ話している途中だというのに、イヴァンがそれを大声で遮る。刹那、イヴァンの周りから強い風が吹き、料理の置かれたテーブルをひっくり返し、シャンデリアを激しく揺らし、大臣や音楽家たちを吹き飛ばしていった。あちこちから悲鳴が上がる。

「イヴァン様……」

ヴァイオレットはイヴァンの燕尾服を掴む。するとその手をイヴァンに取られ、強く握られた。それだけで顔に熱が集まっていく。

「ヴァイオレット、すまない。君を手放したくない。譲れないんだ、これだけは」

イヴァンの言葉が、ヴァイオレットの心に付けられた傷に降り注ぐ。そして、優しさに溢れたその言葉は、ヴァイオレットの傷を癒していった。

「……嬉しい」

歓喜の雫で頰を濡らしながら、ヴァイオレットは呟く。風が緩んでいった。その時である。

「イヴァン、ヴァイオレット、イザベル嬢、これ以上夜会をめちゃくちゃにされたら困るよ。だから提案をさせてほしい」