人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「ヴァイオレット、先に帰っていたら驚くかな?」

悪戯をする子どものようにわくわくしながら、イヴァンは呪文を心の中で唱える。その姿は一瞬にして消えた。



ペガサスが走らせる馬車の中、ヴァイオレットは窓の外を流れる景色を見ていた。しかし、夜会に行く前と違い、彼女の心は景色を見ていても何も感じない。景色をボウッと見つめながらも、頭の中は様々な感情でぐちゃぐちゃになってしまっている。

ミモザとの邂逅に驚き、かつての主人であるイザベルに怒り、そしてーーーイヴァンが自分のために感情を露わにしてくれた。

「イヴァン様……」

話があるから、とヴァイオレットの話を聞くことなく馬車の扉を閉めてしまったイヴァンのことをヴァイオレットは考える。

いつも冷静で落ち着いているイヴァンが、あそこまで魔力を暴走させていた。ヴァイオレットは魔法のことについて詳しくはない。魔法のことは、魔法家系しか学べないのだ。

「私のために、あんなに感情的になってくれた」
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