人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

またヴァイオレットは泣きたい気持ちになってしまう。決して悲しいわけではない。胸の中は嬉しさで溢れ、温かい。

その時、ヴァイオレットは懐かしい記憶を思い出す。それはまだ母が生きていた頃のことだ。眠る前、ヴァイオレットは母にお伽話を聞かせてもらい、その後に、「愛って何？」と訊ねた。その時、母はこう答えた。

『そうね。愛っていうのはね、心がとっても温かくなることよ。その人のことを考えただけで心の中が誰かに抱き締められたみたいに温かくなるの。そして、その人のために色んなことをしてあげたいって思うのよ』

ストン、と今まで気付かなかった答えが胸に落ちて来る。ヴァイオレットの頰は赤く染まっていき、鼓動が早まって苦しくなっていく胸元に手を当てた。

「私……私は……イヴァン様のことを……あ、愛して……」

自覚をした瞬間にヴァイオレットの顔は耳まで赤くなっていく。今、この顔をイヴァンに見られてしまったら「大丈夫かい？」と心配されるだろう。それだけでは収まらず、気持ちに気付かれてしまうかもしれない。

「どうしよう……。イヴァン様は、同情で屋敷に置いてくれているだけであって、私のことなんて愛していないはずなのに……」