人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「今までしたことがないけど、一般の家庭では妻か夫が食事の支度をするのが当たり前。私も元々はメイド。簡単な料理くらいは作れないと……！」

アイリスやリオンに「おいしいよ」と微笑んでいるイヴァンの顔をヴァイオレットは想像する。あの言葉を、表情を、自分にも向けてもらいたい。その一心で、ヴァイオレットは朝ご飯として作る献立を決めていく。

「まずはサラダね！」

作るのはほうれん草と半熟卵、ベーコンとチーズを使ったシーザーサラダだ。レシピをチラリと見ながらヴァイオレットはほうれん草を切るために包丁を取り出す。

「ほうれん草は五センチくらいに切る……」

ヴァイオレットは呟きながら左手でほうれん草を押さえ、右手で包丁を持って切っていく。しかしーーー。

「お、大きさが揃わない……！」

ほうれん草の大きさはバラバラで、所々切れていない部分もある。おまけにほうれん草はまな板の上を飛び出し、キッチンのあちらこちらへ何故か散らばっていた。