人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
謎の声について話しながら、ヴァイオレットとイヴァンは歩いていく。昼時に近付くと王都は色んな人で賑わい、まるでお祭りが開かれたかのように混雑していく。

「わっ!」

ヴァイオレットとイヴァンの目の前で、五歳ほどの男の子が転んだ。ヴァイオレットはすぐに男の子に駆け寄り、「大丈夫?」と声をかける。

「大丈夫だよ!」

転んでしまったというのに、男の子は涙一つ見せずに立ち上がった。怪我などはしていないようだ。そのことにヴァイオレットがホッとしていると、男の子はヴァイオレットを見て「そうだ!」と思い出したかのようにポケットの中に手を入れる。

「銀色の髪に紫の目をしたお姉ちゃんに会ったら、これを渡すようにって言われたんだ」

男の子がポケットから取り出したのは、一つの石だった。形がいいわけでも、特別綺麗というわけでもない、道端に転がっていそうな石である。

「どうぞ」

男の子は無邪気な笑顔を見せながら石を差し出す。ヴァイオレットは突然のプレゼントに少し戸惑ったものの、「ありがとう」と言ってその石を受け取る。刹那、イヴァンの顔色が変わる。

「ヴァイオレット、今すぐその石を離すんだ!」

「えっ?」
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