人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
ヴァイオレットは手足をバタつかせながら言う。手足を動かしたところで、どうすることもできないと頭の隅ではわかっているものの、恐怖から手足を動かしてしまうのだ。

「あんたは邪魔なのよ。あんたがいたら、私が勝ってもイヴァン様は私と結婚してくれないかもしれないじゃない。……だから私のために死になさい!」

イザベルはニヤリと笑った後、呪文を唱える。ヴァイオレットの体はそれと同時に落下していき、悲鳴を上げる間もなく湖に落ちた。

「ッ!?」

水を含んだドレスは一瞬にして重くなり、ヴァイオレットの体はどんどん沈んでいく。ヴァイオレットは必死でもがくものの、口から泡が出ていくだけで無意味だ。息がどんどん苦しくなり、意識が遠のいていく。

(イヴァン様……!!)

ヴァイオレットの目の前は真っ暗になった。



イヴァンは森の中を走っていた。心臓がバクバクと大きな音を立て、手は微かに震えていた。

「ヴァイオレット!!ヴァイオレット!!」

遠くにいる人物を呼び寄せる魔法のせいで消えてしまった妻の名前を、イヴァンは必死に叫びながら森の中を走る。魔力を辿って森に来たのはいいが、広い森の中ではヴァイオレットを見つけることは困難だ。

「ヴァイオレット!!」
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