人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
名前を呼びながらイヴァンはヴァイオレットを探して走る。魔法で捜索も同時にしているものの、森一体に妨害魔法がかけられているのか、全く役に立たない。

「ヴァイオレット……」

もう一度掠れた声でイヴァンは呟く。その時だった。イヴァンの服の裾を何物かが引いた。

「誰?」

イヴァンが下を見ると、そこには森に住む妖精がいた。美しい蝶のような羽を羽ばたかせながら、ジッとイヴァンを見上げている。

妖精は人の言葉を話せない。そして、人の目の前に現れることは滅多にない。イヴァンの中で嫌な予感が募っていく。

「ヴァイオレットがどこにいるのか知っているのかい?」

イヴァンが訊ねると妖精はコクリと首を縦に振り、イヴァンの服を引っ張る。その様子はどこか慌てているように見えた。イヴァンの心拍数が緊張のせいで上がっていく。
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