人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
妖精はイヴァンの服を引っ張り、誘導していく。やがてイヴァンは湖へと連れて行かれた。しかし、湖のほとりでヴァイオレットが立っているわけではなく、それどころか誰もいない。

「ヴァイオレットはここにいるのか?」

辺りを見回しても、ヴァイオレットがいる気配はない。その時、コボコボという音がイヴァンの耳に入った。湖からだ。

「まさか!」

先ほどまで凪いでいたはずの湖の一部に泡が浮かんでいる。考えるよりも先に、体が動いてしまった。魔法を使うことも忘れ、イヴァンは服を脱ぎ捨てると湖に飛び込む。

(ヴァイオレット!!)

目を凝らし、下は下へと潜っていく。そして湖の底に沈んだヴァイオレットを見つけた。冷たい水の中に沈んでいるせいか、ヴァイオレットの顔は青白くなっており、何故か破れているドレスは海藻のように揺れている。

(ヴァイオレット!!)

イヴァンはヴァイオレットの体を抱き締める。そして、心の中で呪文を唱えた。

(カナフ!)
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