人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「ヴァイオレット、気が付いたんだね」

イヴァンがベッドに駆け寄り、安心したように笑う。その様子をアイリスは微笑ましく見守っていた。

「アイリス、少し席を外してくれないか?」

「はい。かしこまりました」

アイリスはペコリと頭を下げ、部屋を出て行く。部屋に残されたヴァイオレットはイヴァンを見つめる。イヴァンはヴァイオレットの頰を撫でた。

「魔法は万能じゃない。ヴァイオレットの怪我や熱を治してあげたいけれど、完璧には治してあげられないんだ。すまない」

「……いえ。助けていただいて、ありがとうございます」

ヴァイオレットの頰を温かい雫が伝う。あのまま、冷たい湖の底で息絶えてしまうのかと思っていた。しかし、この体の心臓は鼓動し続けている。息をしている。そしてーーー目の前にいる人を「愛している」と思っている。

「イヴァン様……!」

涙を拭いながら、ヴァイオレットは何度もイヴァンの名前を呼んだ。呼吸が速くなり、苦しくなっていく。ヴァイオレットの手は自然とイヴァンの手を掴んでいた。
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