人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
そして、家庭教師に厳しい指導を受けるようになってから約三ヶ月後、ついにヴァイオレットがイザベル・ランカスターとしてイヴァンの元に嫁ぐ日がやって来た。

いつもメイド服か古着しか着たことのなかったヴァイオレットは、ブルーグリーンのドレスを着て馬車に乗ろうとしていた。フリルたっぷりのスカートに、スパンコールやパールのビジューが繊細に施された美しいドレスはチャールズが用意してくれたものだ。

「それでは、行ってきます。素敵なドレスをありがとうございました」

ふんわりとしたドレスの裾を持ち上げ、ヴァイオレットは見送りに来たチャールズとイザベルに頭を下げる。心の中はまだ不安で溢れているものの、それを口にすることは許されない。

「しっかり私の代わりをしてよね!」

イザベルは扇子で口元を覆いながらヴァイオレットに言い、チャールズも「この婚姻が重要なことはわかっているな?頼んだぞ」と念を押す。そこまで言うのなら、最初からイザベルを説得して結婚させればいいのにとヴァイオレットは思いつつ、無駄に豪華な装飾が施された馬車に乗ろうとした。刹那。

「ヴァイオレット!!」

大きな声が聞こえ、ヴァイオレットは足を止める。メイド服を着たミモザが「待って!!」と言いながら走って来る。ミモザと顔を合わせるのは久しぶりで、ヴァイオレットの胸が熱くなっていった。
< 20 / 224 >

この作品をシェア

pagetop