人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「ヴァイオレットが、生きていてくれてよかった。こちらこそありがとう」

イヴァンは優しく微笑む。その目には薄らと涙の膜が張られていた。



ヴァイオレットの熱は続き、シャーデンフロイデの調査ができないと焦りを感じる彼女の内側を見透かしてか、イヴァンはヴァイオレットの手を握りながら言った。

「調査は熱が下がったからにしよう。今は調査のことは忘れて、自分の体のことを一番に考えるんだ。いいね?」

「……はい」

イヴァンは毎日のようにヴァイオレットを付きっきりで看病し、ヴァイオレットの気が紛れるようにアルストロメリアに伝わる童話を聞かせてくれたり、庭から薔薇を摘んできたり、着替えの時以外はそばにいてくれた。

(こんな風に看病をされたのは、お母さんが生きている時以来だわ。すごく温かい)

イヴァンが調合してくれた薬を飲み、リオンとアイリスが作ったリゾットを食べ、少しずつ熱は下がっていった。しかし、熱が出て六日目が経った日のことである。

「失礼します」

部屋に入って来たのはイヴァンではなく、アイリスだった。

「ヴァイオレット、おはよう。熱測った?」

「アイリス、おはよう。今から測るわ。……イヴァン様は?」
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