人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
(イヴァン様は優しいから、私に薔薇をプレゼントしてくれるの。私はイヴァン様を愛しているけど、イヴァン様はそうじゃない)

そう言い聞かせていたヴァイオレットの胸がズキンと痛む。それに気付かないフリをして、ヴァイオレットは布団の中に潜り込んだ。

イヴァンが部屋に一度もやって来ない日は、まるで冷めてしまった紅茶のように味気ないものだった。ゆっくりと時間は流れていき、やがて夜を迎える。空には大きな満月が浮かんでいる。

「おやすみ、ヴァイオレット」

「おやすみ、アイリス」

扉が閉められ、ヴァイオレットはベッドの上に横になる。今日一日で熱は下がった。明日からは調査もできるだろう。

(イヴァン様に会いたい……)

そんなことを思いながら、ヴァイオレットは目を閉じた。一日のほとんどをベッドの上で過ごしているというのに、眠気は目を閉じるとやって来る。数分もしないうちにヴァイオレットは夢の世界へと入り込んでいた。

「んっ……」

ヴァイオレットはふと目を覚ます。窓の外は暗く、月の位置も高い。時計を見ると午前零時だった。

「こんな夜中に目を覚ましてしまうなんて……」
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