人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「私は、相手が魔法家系か非魔法家系かを確認する魔法が得意なんだ。あと、呪文を口にしたり杖を使わなくても魔法を使うことができる。だからわかったよ。ランカスター家は魔法家系のはずだからね」

「そうでしたか……」

チャールズやイザベルは、イヴァンが得意とする魔法を何も知らないままヴァイオレットを身代わりにしたのだ。ヴァイオレットはあの二人に対し、呆れてしまう。

「あと、君が偽物だと気付いたのにはもう一つ理由があるよ」

「もう一つ？」

「人狼についてきちんとした知識を持っていたことさ。人狼について書かれている本なんて、研究者かよっぽどの物好きしか読まない。イザベル嬢がそんな本を読むとは思えなかったからね」

「申し訳ありません。昔から本を読むことが好きで、色んな文献に目を通しておりましたので、つい……」

ヴァイオレットが頭を下げると、イヴァンが「別に謝ることじゃないと思うよ？顔を上げて？」と驚いた様子で言う。ヴァイオレットがゆっくりと顔を上げると、イヴァンは自身の黒い髪に触れながら緊張したように口を開く。

「その、嬉しかったよ。人狼について詳しいことを知っている人が来てくれて。僕は人狼になってから親戚には煙たがられるし、人からは恐れられてしまうから……」