人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
そう話すイヴァンの薄い青の瞳は、どこか憂いを帯びていた。とても、目の前にいる彼は幸せそうに見えない。

魔法家系に生まれた者はみんな幸せな暮らしを一生できるのだとヴァイオレットは心のどこかで思い、非魔法家系の自分が現実で幸せになることを諦めていた。そのため、何でも夢見ることができる読書を好きになった。しかし、まだ自分の知らないことは多いのだとヴァイオレットは思う。

(魔法家系に生まれても、ちょっとした事故で幸せが奪われてしまうことがあるのね。人狼になった人を元に作られた物語を目にしたことがなかったから、知らなかったわ……)

イヴァンは寂しそうな目をしている。ヴァイオレットは何か声をかけたかったものの、口を開いても喉から声が出ることはなかった。本をたくさん読んでいるというのに、何を言うべきか言葉が見つからない。

(そもそも先生からは、「淑女は紳士から話しかけられるまで言葉を発してはなりません。自分から話しかけるのは淑女として恥じる行為です!」って言われているから尚更わからないわ)

ヴァイオレットは目だけを動かし、テーブルのそばに立っているリオンとアイリスの方を見る。だが二人も寂しそうな顔をしているだけで、この場の空気がどんどん重くなっていくのを感じた。
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