人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

ヴァイオレットにとってこの屋敷があるウィロウ地方が、森や湖ばかりで賑やかなお店が一つもない場所であるということは、それほど気にしてはいなかった。彼女にとって重要なのは、この屋敷にどんな本があるか、ただそれだけでだったのである。

「書庫は、地下にあります。地下室全てが書庫になっています」

「本当ですか！？」

地下全てが書庫など、ヴァイオレットにとっては天国そのものである。目を輝かせて喜ぶヴァイオレットに対し、アイリスは「本当に読者がお好きなんですね」と呟いた。

「はい。私にとって、本は人生そのものですから」

ヴァイオレットがそう笑顔を見せながら言うと、アイリスは目を見開き、「申し訳ございませんでした」と深く頭を下げる。突然謝罪されたことに、ヴァイオレットは驚いてしまった。

「アイリスさん？」

「その、あたし、ヴァイオレット様がお屋敷に来られた時、嫌な態度を取ってしまいました。あたしとリオンは孤児で、物心ついた頃からある魔法家系の屋敷で働いていました。でもその家から突然追い出されてしまって……」