人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

そう言うミモザの手には一冊の本がある。その本はヴァイオレットが休暇を与えられた際、街にある本屋で買ったものだ。本の内容は、異国の文化についてまとめられたものである。

「その本、すごく面白いわよ！国が一つ違うだけでこんなにも色んなものが違って、同じ国にいても地域によって違うこともたくさんあって、いい勉強になったわ」

「あんたって本当に本の虫だよね〜……」

ミモザは分厚い本をペラペラと数ページめくった後、嫌そうに顔を顰める。本が大好きで時間が空けば読書をするヴァイオレットとは真逆で、ミモザにとって読書は苦痛のようだ。

「本を読むと、色んな世界を旅した気分になるの。ドラゴンの背中に乗って青空を飛んだり、海の中に聳え立つお城に行ったり、本を読むたびに新しい世界に触れたり、色んなことを知れるから大好き！」

髪を結ぶために、ヴァイオレットはゴムを手に鏡台の前に座る。鏡には腰ほどまである長い銀髪に、まるでアメジストのような紫の目をした自分の姿が映る。ヴァイオレットは髪が仕事の邪魔にならないように束ね、メイド服も汚れや糸のほつれがないか確認する。

ミモザはヴァイオレットが使っているベッドの上に本を戻し、その表紙を指でそっと撫でる。その顔はどこか暗い。