人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

その話をイヴァンが申し訳なさそうに口にした時、ヴァイオレットは驚き、「イヴァン様は嫌ではありませんか？」と心配になり訊ねてしまった。人狼という立場で周囲の人と距離を置き、社交界にほとんど顔を出さない彼が結婚式を挙げるなど、相当な勇気と覚悟がいるはずだ。

「僕は親戚から恐れられているから、親戚は誰も出席しないと思う。両親はもうとっくに他界しているし、兄弟もいない。でも教会で式を挙げて、夫婦になったという証は必要なんだ。華やかで豪華な式とはお世辞にも言えないから、ヴァイオレットには申し訳ないけど……」

そう言い、寂しげに笑うイヴァンに対し、ヴァイオレットは首を横に振って言った。

「私は、特別豪華な式を挙げたいとは思っていません。イヴァン様が一番安心できる式ならば、何でも構いません」

「ありがとう。ヴァイオレット」

そんな会話をした翌日、ヴァイオレットは教会にある控え室で、イヴァンが用意してくれたウェディングドレスをアイリスに手伝ってもらいながら着ている。採寸をしていないのだが、ドレスはヴァイオレットの体に驚くほどぴったりだった。