人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

その言葉にヴァイオレットは固まってしまう。結婚式を挙げるということは人前でキスをしなくてはならないということなのだが、ヴァイオレットはこの瞬間になるまで忘れてしまっていた。

（どうしよう……。私、初めてのキスなのに……）

イヴァンと向き合い、頭につけられたベールをイヴァンがゆっくりと上げていく中、ヴァイオレットは緊張で倒れてしまいそうだった。キスなど、小説の中でしか知らない行為だ。

震えるヴァイオレットにイヴァンが気付き、ヴァイオレットの耳元で囁く。

「目を閉じて。すぐに終わるから」

「は、はい」

ヴァイオレットは言われた通り目を閉じる。数秒もしないうちに、ふわりと唇に柔らかいものが触れた。それと同時に参列席から拍手が起こり、神父が告げる。

「神の名のもとにおいて、二人が夫婦になったことを宣言します！」

拍手がさらに大きくなる。だが、ヴァイオレットとイヴァンの唇は離れることがなく、ヴァイオレットの顔は真っ赤に染まっていった。