人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「その、私、偽りとはいえ、イヴァン様の妻となった身ですから……その……つ、妻としてお相手をと……思いまして……」

ヴァイオレットが俯きがちにそう言うと、イヴァンに「その意味はわかっているのかい?」と返される。

「はい……」

ヴァイオレットはコクリと頷き、今にも震え出してしまいそうな手を必死に抑えながら言う。これは嫁いだ私に課せられた義務、そうヴァイオレットは自分自身に言い聞かせた。

家庭教師からは、礼儀作法だけでなく夜の営みについても教えられた。魔法家系に生まれた女性に課された義務は、良家に嫁いで後継者を産むこと。そこに愛があってもなくても、後継者を作らなければならない。

『妻は旦那様が求めてきた場合、それに応えなくてはなりません。旦那様のお相手をすること、それが女性の義務なのです!』

家庭教師の言葉がヴァイオレットの中で思い返される。そう、これは義務なのだ。ヴァイオレットは非魔法家系であり、由緒ある家のご令嬢ではない。しかし、結婚をしたのに子どもがいなければ、イヴァンが後ろ指を指されることになってしまう。
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