人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「まあ、本の世界の方が夢があっていいよね。魔法が使えても、使えなくても、作者の想像一つでみんな仲良くなれるんだから」

ミモザのその言葉に、ヴァイオレットの顔も暗くなってしまった。



この世界は数百年前まで、果てしない争いが続いていた。人々は武器を取り、ドラゴンや人狼や吸血鬼など、人を襲い怪物と恐れられていた存在と戦っていた。

ある時、神の気まぐれか不思議な力を使うことができる人間が現れた。人々はその力を「魔法」と呼び、その力を使って怪物と戦い、平和条約を人と怪物は交わした。

この世界が大きく変わったのは、平和条約を結んだ後である。この世界に住む全ての人が魔法を使えるわけではない。魔法を使えるのは全人類の三十%ほどだけだ。

魔法が使える人たちは、徐々に魔法が使えない人たちを見下すようになった。自分たちだけが富や地位を手にし、貴族や王族と名乗るようになっていった。

魔法を使えない非魔法家系は、貧しく一生働いても地位を手にすることはできない。逆に魔法の使える魔法家系は、国を動かすまでに上り詰めることができる。この世界は、生まれた環境で全てが決まってしまう世界だ。