人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
(どうして、こんなにも胸が怪我をしたみたいに痛いの?)

体に触れられた時よりも、イヴァンに嫌われてしまったかもしれないことが怖かった。手がまた震え始める。

「ヴァイオレット、着いたよ」

イヴァンに声をかけられ、俯きがちに歩いていたヴァイオレットは顔を上げる。ヴァイオレットが考え込んでいる間に、与えられた部屋の前に来ていた。

「送っていただき、ありがとうございます」

ヴァイオレットはイヴァンの方を向き、頭を下げる。するとイヴァンに「ヴァイオレット」と名前を呼ばれ、顔を上げる。

「いいかい?ああいうことは、義務とかそういう気持ちでしちゃいけないんだよ。子どもを作るよう君は教えられたかもしれないけど、僕にはそんな義務は必要ない。義務であんなことをしたくない。……それ以前に、僕たちは「偽物」なんだから」

「……はい。申し訳ありませんでした」
< 54 / 224 >

この作品をシェア

pagetop