人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

ウィロウ地方の領主であるイヴァンが結婚をしたことは、すでに他の地方を治めている領主やアルストロメリアの王宮、そして親族の耳にはすでに入っている。親族は独り身だったイヴァンに妻ができたことを喜ぶ人間もいるが、そうでない者の方が多い。

『あんな化け物と結婚するなんて、お嫁さんが可哀想ね。産まれてくる子どもも化け物よ！まあ、我が一族で独身の人間なんて恥だからしょうがないけどね』

魔法で親族の動きを見た際、イヴァンは唇を強く噛み締めた。決して好きで人狼になったわけではないが、イヴァンに対する風当たりは強い。

（あんな言葉をヴァイオレットが言われたら、耐えられない……）

まだ出会って数日、自分に用意された偽りの花嫁だというのにイヴァンは何故かそんなことを思ってしまう。この気持ちが何かわからない。イヴァンが考えていると、背後から視線を感じた。

「リオン、アイリス、まだ起きていたのかい？」

物陰から申し訳なさそうに顔を出した二人の使用人を見て、イヴァンは驚きの声を上げる。一体いつからこの二人はヴァイオレットとのやり取りを見ていたのだろうか。

「イヴァン様、本当にヴァイオレット様とは「偽物の夫婦」なのですか？」