人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「今日はどれを読もうかしら……」

広い書庫の中を歩き、ヴァイオレットは棚に並べられた本の背表紙を見つめる。本棚は天井に届きそうなほどどれも高く、ランカスター家の屋敷では見たことのない本ばかりが並び、いつもどれを読もうか迷ってしまう。

「この棚には、この国の歴史に関する本が並んでいるのね」

棚をしばらく眺めた後、ヴァイオレットは気になった一冊を手に取り、椅子に座って読み始める。しばらくすると、書庫の出入り口の扉が開いた。

「ヴァイオレット」

そう声をかけたのは、イヴァンではなくアイリスだ。この一ヶ月近くで、アイリスとリオンとの関係は大きく変わった。

ヴァイオレットは「私も元々は使用人だったから」と、様付けで呼んだり敬語で話さなくていいと二人に言い、二人はイヴァンがいない時は「ヴァイオレット」と呼び、友達のように接してくれるようになった。

「紅茶を持ってきたよ。よかったら飲んで」

アイリスがテーブルの上にティーポットやカップの入ったお盆を置き、ヴァイオレットは「ありがとう」と返し、自分でカップの中に紅茶を注ぐ。