人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
世界の西にあるシャムロック国で生まれ、住んでいるヴァイオレットとミモザは非魔法家系に生まれた魔法の使えない人間だ。

ヴァイオレットとミモザは十三歳の頃、病が原因で家族を亡くした。医者に治療を頼みたかったものの、シャムロック国の医師は非魔法家系の治療を断ることが多い。非魔法家系は貧しい人が多いためである。

しかし、シャムロック国以外の他国の医師の元へ連れて行くお金などヴァイオレットやミモザの家にはなかった。その結果、治療を受けられずに家族は亡くなり、ヴァイオレットとミモザは悲しむ暇もなく生きるために働くことになったのだ。

とはいえ、非魔法家系の子どもができる仕事は限られている。ヴァイオレットとミモザはシャムロック国の魔法家系であるランカスター伯爵の屋敷でメイドとして働くことになり、もう五年になる。

だが、どんなに一生懸命働いても二人や非魔法家系の立場が変わることはない。魔法家系にとって、ただの人間であるヴァイオレットたちは見下す対象であることに変わりはないのだ。

メイド服に着替えた後、ヴァイオレットとミモザの長く苦しい一日は始まる。最初に行うのは厨房へ行き、コックと共にランカスター伯爵や伯爵の家族が食べる朝食の準備をすることだ。
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