人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「フェリシアーノ・アルストロメリア様、突然のご挨拶をお許しください。お初にお目にかかります。イヴァン・ブルースターの妻のヴァイオレットと申します。以後、お見知りおきください」

ヴァイオレットは、何度も家庭教師に教えられたカーテシーをし、フェリシアーノに挨拶をする。フェリシアーノは、ニコニコと笑みを浮かべながらジッとヴァイオレットを見つめていた。

「イヴァンから「結婚する」って聞かされた時、相手はどんな女の子なのか城でも話題になってたんだよ。まさか、こんなに綺麗な人だとは思わなかったなぁ」

「おい、フェリシアーノ!」

フェリシアーノが息を吐くようにヴァイオレットを誉めると、イヴァンが顔を真っ赤にしながらそれを止める。異性に「綺麗」と言われたことは生まれて初めてのことで、ヴァイオレットは「こんな私が、綺麗?」と驚きつつも、ふと思ってしまった。

(イヴァン様は、ウェディングドレス姿を見た時も言ってくれなかった)

愛し合う者同士の結婚ではないのだから、誉める言葉がなかったのは当然だろう。しかし、ヴァイオレットの心の中には「他の男性ではなく、イヴァン様に綺麗と言われたい」という願いが生まれてしまっていた。

(何だか私、変だわ……)

「ヴァイオレットは僕の妻だ。そんなに褒めないでくれ」

「どうせイヴァンのことだから、女の子の扱いわからないでしょ?俺を見習ったら?」
< 63 / 224 >

この作品をシェア

pagetop