人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

アイリスが手を広げ、ヴァイオレットも手を広げる。数秒間二人は抱き締めあった後、ヴァイオレットはイヴァンたちが待つ応接室へと向かう。

「失礼致します」

ヴァイオレットが扉をノックして応接室の中に入ると、イヴァンたちも着替えを済ませていた。全員貴族らしい高価な服から一般市民の服を着ている。

「街中を仮にも王族が彷徨くわけにはいかないからね。変装しなくちゃいけないんだ」

白いシャツに水色のリボンタイ、ブラウンのサスペンダーを着たイヴァンが言う。その横でオリバーが「仮にもじゃなくて、本当に王族なんだがな。信じたくないが」と苦笑しながら言った。

「それより、イヴァン」

フェリシアーノがニヤニヤしながらイヴァンを肘で突く。イヴァンは何故か頰を庭に咲いている薔薇のよう真っ赤にし、緊張しているように見える。ヴァイオレットが首を傾げていると、「その……」とあちこちに目を動かしながら言葉を発する。

「……ヴァイオレット、とても似合ってる。綺麗だよ」

イヴァンの言葉にヴァイオレットの目は見開かれる。それは、心の片隅で密かに言われたいと思っていた言葉だった。