人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

「無事に着けてよかったよ。ヴァイオレットは王都に来るのは初めて？」

フェリシアーノに訊ねられ、ヴァイオレットは「はい」と頷く。シャムロック国からウィロウ地方に行くまでに馬車で通りかかったことはあったものの、足を踏み入れるのは初めてである。

「それなら色々オススメのお店、教えなきゃね。案内してあげなよ」

フェリシアーノがイヴァンに「ね？」と笑いかけ、イヴァンは「そ、そうだね」と目をあちこちに動かしながら言う。その手は微かに震えていた。

「おい、遊びに来たんじゃないんだぞ」

オリバーは呆れながら言ったものの、サクラが「いいじゃないですか」と微笑む。優しげに細められた黒い瞳は、ヴァイオレットとイヴァンを交互に見つめた。

「イヴァンは普段は屋敷に篭ってばかりですし、ヴァイオレット様は王都に来るのは初めてです。少しくらい観光してもきっとバチは当たりません。今回の目的は、シャーデンフロイデが荒らした場所を視察するだけですから時間はかかりません」