人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「イヴァン様。もう王都に着きましたし、手を繋ぐ必要はないのではありませんか?」

恋愛小説ではよく男女が手を繋いで街を歩く描写があるものの、それは二人が互いを好いているためである。偽りの夫婦である自分たちがそんなことをしなくてもいいのでは。そう思ったヴァイオレットだったが、宙に固まったままのヴァイオレットの右手は素早くイヴァンに取られてしまう。

「王都の通りは複雑だからね。迷わないように」

そう話すイヴァンの顔は、耳まで赤い。そして、それを目にしたヴァイオレットも何故か顔が赤くなっていった。



王都・シエンナは裕福な非魔法家系が様々なお店を出しており、いつも賑やかだ。多くの住民や旅人が通りにいくつも並んだお店に足を運んでいる。

「とても賑やかですね。非魔法家系もこんな風にお店を出していたなんて、初めて知りました」

ヴァイオレットは驚きつつ、嬉しそうに笑う。非魔法家系の彼女がこれまで辿ってきた人生は、幸せがたくさん溢れるものではなかった。今、目の前に広がっている光景は、ヴァイオレットにとって夢のようなものだろう。

「アルストロメリアは、魔法家系とか非魔法家系とか関係なく暮らそうって動きが数年前から出てるからね。俺が王になったら本格的に法律を作るつもり。生まれた立場で人生が決まるなんて、そんなの残酷だからさ」
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