人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
「図書館は少し遠いですけど、本屋ならすぐそこにあります。案内します」

オリバーがそう言い、ヴァイオレットは目を輝かせる。イヴァンと繋がれた手を自然と引っ張ってしまうほど、彼女はわくわくしていた。

「ヴァイオレット、そんなに僕を引っ張らなくても本屋は逃げたりしないよ?」

困ったようにイヴァンは笑い、ヴァイオレットは「申し訳ありません」と足を止める。変装しており偽物とはいえ、ヴァイオレットは貴族の妻なのだ。はしゃいではならないと家庭教師に教えられてきたことを思い出す。

(子どもみたいにはしゃいで、恥ずかしい……!)

真っ赤になっていく顔を誤魔化すようにヴァイオレットが俯くと、「いや、はしゃぐのがダメなわけじゃないよ」と声が降ってくる。

「ヴァイオレットがこんなにもはしゃぐなんて、よほど本が好きなんだと思ってね。好きなものがあるというのはいいことだよ。俯く必要なんてない」

ヴァイオレットが恐る恐る顔を上げれば、イヴァンは優しい笑みを浮かべていた。それにヴァイオレットはホッとしつつ、また違った感情に心が揺れていくのを感じる。
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