人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

イヴァンはそう言い、目の前にあるお店の扉を開ける。ここはどうやらドレスやよそ行きのワンピースを売っているお店らしく、可愛らしいドレスやワンピースが数多く並んでいた。

たくさんのドレスが並んでいる光景を見るのは初めてのため、ヴァイオレットの目は大きく見開かれ、「綺麗」と呟いてしまう。しかし、すぐにヴァイオレットは首を横に振った。

「イヴァン様。お気持ちは嬉しいのですが、私はドレスを持っています。なので必要ありません」

このお店は一般市民向けのもののため、値段はそれほど高くはない。しかし、決して安いものでもない。ヴァイオレットが断ると、イヴァンは困ったように眉を下げる。

「ヴァイオレット、君は確かドレスは四着しか持っていなかっただろう？いくら何でも四着は少なすぎる」

イヴァンの言う通り、ヴァイオレットは四着しかドレスを持っていない。ランカスターの屋敷を出る際、チャールズがヴァイオレットのために用意したのは四着しかなかったためである。本物のイザベルならば、発狂している少なさだろう。貴族の女性は何十着もドレスを持っているのが常識なのだ。