人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜
『すぐに噴水広場まで来てくれ！シャーデンフロイデが出た！』

そう焦ったように牡鹿は言った後、一瞬にして消えてしまう。だが、ヴァイオレットは牡鹿が消えてしまったことに驚く暇などなかった。王都に来たのはシャーデンフロイデの調査をするためだ。その調査対象が現れたことの方が驚きが増す。

「イヴァン様、すぐに着替えます！」

ヴァイオレットは試着室に入り、紫のドレスを脱いでワンピースへと着替える。試着室を出るとすぐにイヴァンが会計を済ませ、二人は急いでお店の外へと出て、人気のない裏路地へ入った。

「プラーツ！」

イヴァンが呪文を唱えると、二人の足元に魔法陣が現れる。イヴァンが手を差し出し、ヴァイオレットは緊張を覚えながらその手を取った。

「噴水広場まで！」

イヴァンがそう言うと、魔法陣が光を放ち、またヴァイオレットの体に捻れるような感覚が走る。ヴァイオレットは、イヴァンの手を強く握りながら目を閉じた。



捻れるような感覚がなくなり、目を閉じているヴァイオレットの耳に人々の叫び声や何かが羽ばたく音、フェリシアーノとオリバーが呪文を唱える声が入り込んでくる。

ヴァイオレットが目を開けると、目の前には大きな噴水があった。噴水の周りにはベンチや色とりどりの花が植えられた花壇があり、普段は住民たちの憩いの場となっているのがわかる。

しかし今、この場は恐怖で包まれていた。噴水広場の上空を人々は見上げ、恐ろしい光景に悲鳴を上げている。
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