人狼様に嫁ぎます〜シンデレラ・ウェディング〜

ヴァイオレットとイヴァンも空を見上げる。広がる雲一つない青空の中、一頭の巨大なドラゴンが飛んでいた。その大きさは二十メートルを超えており、全身は黒い鱗で覆われている。その目はガーネットのように赤く、手足には長い爪、尻尾にも鋭い棘のようなものが付いている。誰が見ても恐怖を感じてしまう見た目だ。

「これが、シャーデンフロイデ……」

ヴァイオレットの体が震える。目の前に、百年以上前に封印されたはずのドラゴンがいるのだ。恐怖が嫌でも込み上げてしまう。

「ヴァイオレットは危ないからここから動かないように。いいね？」

イヴァンは真剣な顔でそう言うと、フェリシアーノとオリバーが魔法を放つ最前線へと走っていく。

「イヴァン様……」

ヴァイオレットは不安になり、ワンピースの裾を強く掴む。それと同時に、シャーデンフロイデと戦う力のない自分に苛立ちを感じた。