アオハル、キス。
その場から動けなくなり立ちすくんでいると、
「てか遅くない?」
瞳ちゃんが振り返った。
「あ。」
瞳ちゃんは私を見たまま一時停止。
それにつられて紗栄ちゃんもこっちを振り返った。
「え、のどか・・・」
この最悪な空気をどうにかしたくて、私は咄嗟(とっさ)に口を開いていた。
「ごめん!遅くなって。お待たせしました〜っ」
どうにか明るく振る舞って、何も聞いてないフリをした。
明らかに無理があるけど、でも、こうするしかなかった。
「っ、遅いよ〜っ、じゃ帰りますか!」
紗栄ちゃんは空気を変えようと頑張っていつもの感じで振る舞う。
瞳ちゃんは何を考えているのか、無言で紗栄ちゃんに続き立ち上がると靴を履き始めた。
その後の駅までの帰り道は地獄だった。
いつものように並んで歩く瞳ちゃんと紗栄ちゃんについて後ろを歩く。
紗栄ちゃんが頑張って話題を振ってくれたけど、瞳ちゃんはいつもよりテンション低くて、ただただ気まずい空気が私たちの間に流れていた。
そして次の日から、瞳ちゃんには無視されるようになった。
紗栄ちゃんも最初はまだぎこちなく話してくれていたものの、すぐに瞳ちゃんと同じ態度をとるようになった。
私が近くに行くようなことがあると、決まってふたりは私のことを"背後霊"と呼んだ。
毎日学校に行くことが憂鬱で、ふたりに嫌われていることがそのうち皆んなにも広まって皆んなから嫌われるような気がして怖くて仕方ない。
学校で笑うことなんてほとんど、いや、全くなくなった。