アオハル、キス。
まだ教室の真ん中で盛り上がっている彼女らを横目に私は静かに荷物をまとめ、教室の後ろから廊下へ出た。
その時、
「のどかちゃんは?」
久しぶり聞いたその声に足を止めた。
ドキドキドキと胸が鳴りだす。
「あー。用事あるんだってー」
瞳ちゃんの声にバッグを持つ手に力が入る。
それ以上、あの好きな声は聞こえてこない。
話題が切り変わった様子に私は昇降口へとまた足を進めた。
翔吾くんが私の名前を出してくれたことが嬉しい。
それなのに、悲しい。悔しい。
この行き場のない思いに、目の前が滲(にじ)み出して私は駆け足で学校を出た。