アオハル、キス。


・・・・・・何、この状況。


さっきから心臓がうるさい。


棚から救急箱を持ってきて、ガーゼと精製水を取り出した翔吾くん。


「先に洗った方がいいよな。俺がやるけどいい?」


私は黙って頷くことしかできなかった。


まさか、こんなことになるなんて。


もう諦めるしかないと思っていた好きな人がこんな近くに・・・しかもケガの手当を・・・


顔が熱を持っていくのがわかる。


私の心情をよそに慣れた手つきで処置をしてくれる翔吾くん。


「久しぶりだな。こうやって話すの」

「そ、そうだね・・・」


処置してもらっている傷がちょっと痛むのもあるけど、緊張で手に汗が滲んでくる。


「・・・・・・何があったかは知らないけどさ、大丈夫?」


その言い方から、今のこの状況だけのことを言われているわけじゃない気がした。


でも、


「大丈夫、だよ」


そう答えるしかない。


言えるわけがないよ。


"いじめられてる"なんて。


自分でもまだ認めたくないのに。そして、それを翔吾くんに言うのだって恥ずかしくて、軽蔑されるんじゃないかとか、色んな不安が頭を埋め尽くしていく。

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