両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
プロローグ
■プロローグ

 夫である翔真さんに手を引かれ寝室へと移動した。
 私はこれから彼に抱かれる。愛し合う夫婦だからではなく、子どもを作るためだ。
 彼は私をベッドに組み敷くと、部屋の照明を暗くしてくれた。お互いの輪郭がぼんやりとわかる程度の薄暗い寝室で私たちは抱き合う。
 その日の翔真さんは意地悪で、私はベッドの中でとことん焦らされた。
 絶頂まで高められ頭が真っ白になる。翔真さんとひとつになりたくて体の奥が切なくうずいた。
 快感に翻弄されるうちに羞恥を忘れた私は、「お願い、もう……」と涙声でお願いをする。
 けれど翔真さんは「まだだめだよ」と静かに微笑んだ。
 これ以上気持ちよくなったら、頭がおかしくなってしまう。そう思いながらシーツを掴み、与えられる快感に甘い声をもらす。
「――彩菜」
 どこに触れられても気持ちがよくて、耳元で名前を呼ばれるだけで背筋が大きく跳ねた。
 そんな私を見て、翔真さんが「本当にけなげでかわいいね」と低い声でささやく。
「名前を呼ばれるだけでこんなに感じるのは、俺の声があいつに似てるから?」
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