両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 その言葉に、ふたりの視線がテーブルの上に向く。私の前に置かれているのはカフェオレとほぼ手つかずの状態のサラダだけ。
 それに気付いたお義父様が「おや」と私の顔を見る。
「体調が悪くて食欲がないってことは、もしかして?」
 期待がこもった視線を向けられ、妊娠しているかもしれないと勘違いされているのに気付いた。翔真さんも驚いた様子で私を見る。
「ち、違います!」
 私は慌てて首を横に振る。
「ちょっと忙しくて食欲がないだけですから」
 そう説明したけれど、翔真さんは真剣な表情で私を見つめた。
「本当に?」
「本当です。体調にはなんの変化もありません」
 問いかけに答えると翔真さんは息を吐き出した。私が妊娠していないと知った彼は、どこかほっとしているように見えた。
「そうか。早とちりをして悪かったね」
 謝ってくれたお義父様に「いえ」と微笑む。
「再来週のパーティーはぜひ出席させてください」
「それは助かるよ。ありがとう彩菜ちゃん」
 にっこりと笑うお義父様とは対照的に、翔真さんの表情は少し険しかった。
「彩菜。無理してないか? 調子が悪いならすぐにでも病院の予約をして、ちゃんと診てもらったほうがいい」
「そんな、わざわざ病院に行くほどでは」
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