両片想い政略結婚～執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない～

「ひとりで行くのが不安なら俺もスケジュールを調整して付き添う。今週中にでも予定を開けて……」
　彼はスマホを取り出そうとする。私はその勢いに圧倒されながら、「大丈夫ですよ。本当に」と首を横に振った。
「最近暑い日が続いていたから軽い夏バテだと思います。一時的なものなので、心配しないでください」
　私の説明を聞いても翔真さんの心配は収まらず、「本当は無理してるんじゃないか？」と何度もたずねられた。
「本当に無理してません」
「じゃあ少しでも具合が悪かったら、我慢せずちゃんと言ってくれ。約束できる？」
　翔真さんは長身をかがめ、私の顔をのぞき込む。真剣な表情で見つめられ、どきどきしながら「はい」とうなずいた。
　それでも信用できないのか、翔真さんは萌絵さんのほうを向く。
「手島さんですよね。彩菜の体調のことを教えてくれてありがとうございます」
「いえ。彩菜ちゃんは私にとってもかわいい後輩ですから」
「もし彩菜が無理をしているようなら、また教えていただけますか？」
「もちろん。まかせてください！」と萌絵さんは胸を張る。
「翔真さん。そこまで心配しなくても」
　私が困り顔をしていると、そのやりとりを見ていたお義父様が「相変わらず仲がいいようでよかった」と笑った。