両片想い政略結婚~執着愛を秘めた御曹司は初恋令嬢を手放さない~
 私の視線に気付き、目元だけで小さく微笑む。そのかっこよさに体が震えた。
 あんなに素敵な人が自分の夫だなんて、信じられない気分になる。そしてやっぱり翔真さんが好きで好きで仕方ないと実感する。
 熱くなった頬に手を当てため息をついた。
「彩菜ちゃん。どうしたの?」
 私の顔が赤いのに気付いたのか、お義母様が声をかけてくれた。
 結婚して半年以上経つのに、彼を見るだけでいまだにドキドキするなんて恥ずかしくて言えない。そう思い笑顔を作り誤魔化す。
「たくさんの人とお話ししていたら、少し疲れてしまって。気分転換にロビーを歩いてきてもいいですか?」
「もちろんいいわよ。じゃあ、私も一緒に……」
「いえ。ひとりで大丈夫ですから」
 優しいお義母様に首を横に振り会場を出る。廊下に出て扉を閉めると、賑やかな声が遠ざかり一気に静かになった。
 頬のほてりが収まるまで少しひとりでいよう。
 私はゆっくりと息を吐き出し歩き出す。
 ホテルのロビーからは、見事な庭園が見渡せた。
 手入れの行き届いたイングリッシュガーデン。色とりどりのバラやクレマチスが美しいアーチを作り景色を彩っていた。
「きれい……」
 そうもらしたとき、うしろから靴音が近づいてきた。
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